タイガー・ジェット・シン

制作年:
1995年
提出先:
週刊朝日連載・朝日新聞社「聞いて極楽」より

「東スポ、イチバーン!」タイガー・J・シン発言

4・9・8「 スーパーワイド」にて。 カナダの新聞で報じられた「 シン、不動産サギで逮捕」のニュースを全面否定し、その訴えを掲載した東スポに謝辞を述べる。
今年七月六日、カナダのトロント・スター紙が、シンと義兄、友人が不動産サギで約七万三千円をだまし取ったとして逮捕状が出され、シンは容疑をすべて認めた、というスクープを報道した。が、今月六日に当のシンが来日、東スポの独占インタビューに応じ、「サギ報道はすべてデタラメ」と訴えた。ニュースが本当であってもウソであっても、それはどちらにしても法律やらの絡む通常の社会的な問題であるのに、シンの会見風景はやはり悪役プロレスラーのフォーマットにのっとっていたのがおもしろかった。必要以上に大声でまくし立てるとか、日本語訳のテロップの一人称を「俺様」にしないことにはどうも座りが悪いように感じてしまう、言語を超えて伝わる押しの強さなど、「今度という今度は、馬場を地獄に送ってやるぜ。この俺様がな」という、シリーズ開幕前のハッタリと同じに見えるのがすごい。しかしこのネタが、東スポの一面を飾ることは何の問題もないが、VTRつきでワイドショーに取り上げられるということは、また少し意味が違うと思う。数年前から、ワイドショーの中で「スポーツ新聞紙面を紹介する」というのが定番企画になった。ただ記事を読み上げ、画面もその記事部分をただうつしているだけという「これがテレビか」というつくりだが、これによってB 級C 級といわれるマイナーな事件そのものの立場も少なからず変化し
ていると思う。流すVTR がなければ成立しないのがワイドショーネタである。逆に、何のコメントも取れなかったという「失敗取材」も、「何もありませんでした」というVTR があるだけでネタになる。取材できない海外の小ネタや、取材しようのないバカネタなどは、これまで「絵がない」という点だけでも切られていたわけだが、この「紙面紹介」という新手法によって、ワイドショーにくい込むことになったのである。これまでは夕刊紙を読む人だけのものであったマイナーニュースの消費のされ方が明らかに変わったということである。東スポは「東スポ読者」を対象としているが、ワイドショーは「世間一般」を相手にしているのだ。東スポ読者じゃない人まで東スポを読む世の中が来た、といってもいいだろう。東スポを共有する世の中、ともいえるわけだ。これまでその共有を困難にしてきた一面や三面の記事の特殊性は、テレビが介在してくれたお陰で市民権を得たのであるが、残るは真ん中のHページだ。これを共有してこそ初めて世間は東スポをし得たことになるのではないか。凡ちゃん( 大木凡人) が、「東スポ、今日の玉門占いは女優の鈴木京香さんです—–」などと読み上げる日は来るのか。